尖圭コンジローマの症状
尖圭コンジローマは性行為感染症の一つです。
特徴として陰茎や肛門、膣にできものが出来るため、非常にびっくりして不安になる人も多いようです。
ほとんどが婦人科診察の際に偶然見つかったり、自覚症状として病変を触れたり、かゆみがあることがありますが、激しい重い症状は見られません。
性交で生じる傷が出来やすい場所、腟の入り口、特に小陰唇の内側に出来ることが多く、また腟と肛門の間や、肛門周囲にできることも多いです。
治療しないで放置すると、病変が大きくなったり腟内にまで拡がる事があります。早期の治療が早い治癒につながります。
コンジローマは病変からHPVが排出されるので、病変がある時期は感染性があります。
治療が終了するまでの間、性交はコンドームを使用してください。
妊娠中にコンジローマが発生すると、出産時に赤ちゃんに産道感染を起こし、喉頭咽頭腫の原因となるため、帝王切開が選択されることが多いです。
膣トリコモナス炎
膣トリコモナスと呼ばれる原虫の感染によって、膣に炎症が起きる病気です。悪臭のするおりもの、外陰部のかゆみ・痛み、泡が混じった黄色・緑色のおりもの、排尿痛など比較的強い症状が現れるので、早い段階で発見することが可能です。
これらの自覚症状があるのに適切な治療をしないで放置していると卵管炎を発症し、不妊症につながることもあります。また妊娠しても、流産や早産を起こすこともあります。
膣の分泌液を採取して顕微鏡で見ると原虫が動いているのがわかるので検査は簡単です。内服薬による治療で比較的早く治りますが、パートナーが治さない限り、再発を繰り返しますので、治療は二人で一緒に行います。
トリコモナスの症状
かゆみとおりものの異常(黄色く、臭いがします)がみられます。強い炎症を起こすため、不正出血がみられることもあります。
膣カンジダ症
真菌(カビ)の一種であるカンジダの感染によって、膣や外陰部に炎症が現れる病気です。
白くボロボロしたおりもの、膣・外陰部の激しいかゆみ、灼熱感、性交痛などが発症を疑うサインとなります。
他の性感染症に比べて不妊や流産などの大事の原因にはなりませんが、免疫力が低下すると何度も再発するため、生活の質を大きく低下させてしまうことがあります。
カンジダ自体は健康な人の皮膚や腸にも存在しているので、発症の原因がセックスに限定されるわけではありませんが、疑わしい場合はパートナーの検査・治療も必要となります。
梅毒
「梅毒」と聞いても多くの方が、昔の病気という認識を持っていると思います。しかし、近年、梅毒は急増しており、2021年の感染者は7000人以上に増え、過去10年で最多となりました。
梅毒は、梅毒トレポネ−マを病原体とし、粘膜から感染する性感染症です。感染経路のほとんどはセックス、オーラルセックス、アナルセックスなどの性行為です。
セックスや類似性行為(フェラチオやアナルセックスなど)を介してトレポネーマという病原微生物に感染することで、性器や肛門、口のしこり、リンパ節の腫れ、全身の皮膚にアザやブツブツができる性感染症です。
梅毒は、抗生物質のペニシリンの登場により一度は「昔の性病」になりましたが、2010年以降は感染者が大きく増加しており、過去5年間で感染者数は5倍になりました(2016年は11月末時点で約4,000人)。
女性では10~20代、男性では40~50代の感染者が増えています。感染者急増の背景には「セックスの低年齢化」や「出会い系アプリの普及」、「風俗が感染源」などの指摘がありますが、詳しい原因は不明です。
検査・治療体制の整った日本では、昔のように梅毒で死に至ったり、母子感染を起こすリスクはほとんどありませんが、梅毒になるとHIVの感染リスクが上昇するため、油断は禁物です。
上記の性感染症の症状を比較してみると、排尿痛や外陰部・膣のかゆみ、おりものの異常など、同じものが見つかります。性感染症に感染している人は、例えばクラミジア単独ではなく、淋病や性器ヘルペスなど複数の病気に感染している可能性が高いのです。
感染リスクの高い性行為を日常的に行っていれば、複数の病気に感染してしまうのは仕方のないことです。複合感染を避けるためには、不特定多数のパートナーを持たない、コンドームをつけるなどの予防を心掛けることが大切です。
梅毒の症状
近年では進行した梅毒が発見されることはまれです。
初期は感染部位(性器、口、肛門、手指など)に痛みのないしこりができ、膿が出たりします。また鼠径リンパ節が腫れます。
その後、全身のリンパ節が腫れたり、発熱、倦怠感、関節痛が出る場合があります。バラ疹と呼ばれるピンク色のあざが足の裏から顔面まで出現します。
妊婦さんが梅毒に感染している場合、お腹の赤ちゃんが先天性梅毒にかかる可能性がありますので、妊娠初期には検査が行われ、感染が分かった場合には妊娠中も治療が必要です。
やっぱり恥ずかしい!? 産婦人科(婦人科)で行う性感染症の検査
性感染症の検査は産婦人科、泌尿器科、皮膚科、性病科などで受けることができます。男性なら「泌尿器科」、女性はまず「産婦人科」を受診するのが一般的です。若い女性のなかには「産婦人科は受診ハードルがむちゃくちゃ高いイメージがある」、「そもそも妊娠してないのに受診できるの?」と思われる方もいるかもしれません。
産婦人科は、妊娠や出産を扱う「産科」と、月経に関することや子宮や卵巣などの病気、更年期障害などを扱う「婦人科」に分かれており、10代から高齢の女性まで幅広い世代の方がさまざまな理由で受診しているので、未婚の若い女性だからなどという理由で恥ずかしがることは全くありません。
産婦人科の診察は、まず受付で「性感染症の検査を受けたい」旨を伝えて、問診表に気になる症状などを記入します。そして診察室では、記入内容を元にして問診が行われます。
問診では、体のどんな場所(性器・咽頭・肛門ほか)にどんな症状(排尿痛、陰部のかゆみ、おりものが臭い、おりものに血が混じるなど)があるのか、セックスはどのくらいの頻度で行うのか、コンドームの着用の有無など、話しにくい内容も含まれますが、病気を正しく診断するうえで欠かせない情報ですので、包み隠さず話しましょう。
医師全体に占める女性の割合が高くなっている近年は、産婦人科にも多くの女性医師がいます。診療科目の特性上、デリケートな内容もざっくばらんに話せるようなサッパリとした先生が多いので、ご自身と相性がよい医師を見つけることはそれほど難しくないでしょう。
性感染症の検査は、綿棒や木製のへらを使って膣内部の分泌液(おりもの)や細胞を採取したり、採血、採尿が行われます。
ただし、オーラルセックスやコンドームを着用しないセックスなど、感染リスクがある行為を行ったからといって、その直後に産婦人科で検査を受けても正しい結果は得られません。何故なら、大抵の病気は感染してから発病するまでに潜伏期間があるためです。
具体的には、クラミジアで1~3週間、トリコモナス症は1~2週間、膣カンジダ症は一定せず、尖圭コンジローマは約3ヶ月、梅毒で約10日~90日、淋病で2~10日の潜伏期間があります。
自覚症状に乏しい性感染症が増えているため、「私が感染しているはずがない」と油断するのは危険です。クラミジアや淋病などによる炎症が無症状のまま卵巣に広がって、卵管が変形・閉塞した結果、気付いた時には自然妊娠が困難になっている女性も少なくありません。
20代から30代の女性の皆さんは、毎日の仕事が忙しくて、ご自身の体をケアする時間がほとんどありませんよね。晩婚化で出産年齢が高くなっているからこそ、将来の妊娠・出産に悪影響を及ぼす病気に感染していないかを最低一度は検査しておきたいものです。